舌診に関して

漢方では人間の体を気・血・水の三要素で捉え、各要素の状態や相互の関係から病気の原因を見極めます。この3つが、不足する・停滞する・逆流する(気のみ)状態にそれぞれ名前が付けられています。

不思議な力を持つ「気」

生命現象の根源である目には見えないエネルギーです。怪しいものが苦手でよくわからない方は自律神経の働きと思っておいてください。昔の人はよくわからない、見えないけどそこに働く力のことを「気」と名付けました、病気・空気、雰囲気、景気、気持ちなどです。

  • 気虚=気が不足する
    元気の無い状態。疲労感、食欲不振、免疫力低下
  • 気鬱(気滞)=気が停滞する
    喉のつまり、胸のつかえ、憂うつ、イライラ、むかつき、生理不順
  • 気逆=気が逆流する
    頭痛、めまい、動悸、冷え、のぼせ

栄養をめぐらせる赤い流れ「血」

全身に栄養分を運ぶ流れのことです。主に血液だと思っていただいてかまいません。「血の道」という言葉を聞いたことがありませんか? 日本の漢方では生理不順から更年期障害にいたるまで婦人科系は全部この「血の道症」で一括りにされています。女性のトラブルと切っても切れないのがこの「血」です。

  • 血虚=血が不足する
    疲労感、めまい、顔色が悪い、肌荒れ、抜け毛、白髪、眼精疲労、不安感、不眠
  • 瘀血(おけつ)=血が停滞する
    肩凝り、頭痛、腰痛、色素沈着、皮下出血やあざができやすい、目の周りのクマ、生理不順、不正性器出血

潤いをもたらす透明な流れ「水」

水ではなく津(しん)と呼ぶこともあります。血液以外の体液のことで、代謝や免疫に関わっています。人間の体は60〜70%が水分ですからあらゆる組織に満ちている大切な要素です。

  • 津虚=水が不足する
    喉の渇き、肌の乾燥、尿量減少、便秘
  • 水毒(水滞)=水が停滞する
    気圧性の頭痛、めまい、動悸、むくみ、胃もたれ、湿疹、関節の鈍痛

この気血水を簡便に見る方法が舌診です。

舌診

舌は、筋肉であり内臓であり、人が体の内側を外から見ることができる唯一の臓器です。東洋医学の世界では、舌はその人の体質や内臓の状態を映し出す“鏡”であると考えられており、舌の状態を観ることでその人の体質や状態を知る手段のひとつとされています。

具体的には、「舌の形状」、「苔の状態」、「舌色」「舌裏の静脈」などを観ます。人の理想的な舌は、きれいなピンク色で、薄い白色の苔があり、舌表面には適度な潤いがあるのが理想とされます。

【舌の形と苔の状態】

自然界の苔が湿気を好んで群生するように、舌にも湿気が多いところにはたくさんの苔がへばり付きます。人は、内臓(特に胃腸)に未消化物や余剰水分が多いと舌の表面に分厚い苔が現れ、舌全体もボテッと膨らんだ状態の形状になります。そして浮腫んだ状態の舌には横側に歯型が付きやすくなります。

逆に、水分不足(特にお年寄りに多い)で口の中が乾燥状態だと舌に横側や中央へ裂紋(れつもん)といってひび割れが現れます。このようなタイプの方の舌は細く痩せて先端が尖ったような形状になります。

【舌と苔の色】

舌と苔の色により寒・熱証を判断します。まず舌の色は大きく、赤(鮮赤・ルビー色)・ピンク・白(薄いピンク・豆腐色)の3つに分類できます。健康な状態であればピンク色をしています。
赤(鮮赤)色が濃い程「熱証」であることを現し、のぼせやほてり感があり、口内炎が出来やすい、潰瘍などの消化器系に炎症を伴うケースが多いよとされます。逆に、舌色が白っぽいほど「寒証」を現し、手足の冷え、貧血、下痢傾向にあります。

苔の色は体(特に胃腸)へ貯まった余剰水分の状態を表します。苔の色が白っぽいと冷たい水分「寒湿」が停滞しており、苔の厚みでその量が多い少ないを判断します。また苔の色が黄色味がかって酒飲みに多い黄色っぽい舌苔がベットリと付着している方は、体内に溜まった余剰水分に熱が加わった「湿熱を表し、消化器や口腔粘膜に炎症が起こりやすく、口内炎、胃・十二指腸潰瘍、胸やけ、ゲップ、口臭、口が粘る、口が苦い、酸味が込み上げるなどの症状が起こりやすくなります。

このように舌診から様々な情報を得ることができます。しかし、舌の状態や色は体調により変化しやすいため、毎日観ていると身体の調子によって舌の状態が変化していることに気が付くはずです。

以下に、代表的な舌の状態を載せます。

理想の舌

気が足りてない舌【気虚】

血が足りてない舌【血虚】

体が湿気ている舌【湿邪】

体が水不足である舌【陰虚】

血行が悪い舌【瘀血】

気の巡りが滞っている舌【気滞】

体に熱がこもっている舌【熱邪】